「白い砂糖は漂白されている」
「精製された砂糖は栄養価が低い」
「白い砂糖より茶色い砂糖のほうが良い」
こういう話を一度は聞いたことがあるのではないのでしょうか。そして、これを信じている方も多いはずです。
なので今回は、砂糖の種類や特徴を踏まえながら「白い砂糖は本当に体に良くないのか」その真実をお伝えしていきます。
この記事を読むだけで、砂糖の謎が解け、より健康的で美味しい食事ができるようになるでしょう(^^)/
砂糖の種類と違い
まずは、砂糖の種類について見ていきましょう。
砂糖は原料と作り方によって、さまざまな種類の砂糖ができます。
砂糖の原料による違い
砂糖は、サトウキビ(甘藷)や甜菜(砂糖大根)などの植物から作られます。その植物に含まれている、「ショ糖」という炭水化物を取り出して製品とします。
サトウキビ(甘藷)
サトウキビは高温多湿を好み、日本では鹿児島県や沖縄県で栽培されています。ショ糖を10~20%含んでおり、それを精製したものを「きび砂糖(甘藷糖)」と呼び、市販の大部分を占めています。
甜菜(砂糖大根)
甜菜(てんさい)は冷涼な地域を好み、日本では主に北海道で栽培されています。甜菜は、別名で砂糖大根やビートともいいます。ショ糖を15%~20%含んでおり、甜菜の根に含まれている糖分からは「甜菜糖(ビート糖)」が精製されます。甜菜糖は業務用で多用されています。
製法による違い
砂糖は製法により含蜜糖と分蜜糖に分けられ、その性質と状態によってさまざまな種類があります。
含蜜糖
含蜜糖は、原料から搾取した糖液をそのまま煮詰めたもので、黒砂糖が代表的です。黒砂糖はサトウキビから作られ、カルシウムや鉄などのミネラルが豊富に含まれています。特有の風味とコクがあるので、かりんとうや羊羹などに使われています。
ちなみに!砂糖ではないけど、メープルシロップもサトウカエデの樹液を煮詰めたものだから、含蜜糖に分類されるよ!
分蜜糖
分蜜糖は原料の糖液を遠心分離機で振り分け、砂糖の結晶を取り出したものです。精製され、さまざまな砂糖(精製糖)が作られます。
ざらめ糖(ハードシュガー)
ざらめ糖は結晶が大きく水分が少ないのが特徴で、ハードシュガーともいいます。ざらめ糖は更に、白ざら糖(上ざら糖)、中ざら糖(黄ざら糖)、グラニュー糖に分類されます。
白ざら糖(上ざら糖)
白ざら糖は精製して最初に取り出される白色の結晶で、純度が高くグラニュー糖より大きくて光沢があります。
中ざら糖(黄ざら糖)
中ざら糖は、白ざら糖の結晶をとった後に残った糖液から取り出される黄褐色の結晶です。白ざら糖と同様純度が高い砂糖で、まろやかな風味があります。
グラニュー糖
グラニュー糖はざらめ糖の中で最も結晶が小さいもので、さらさらした高純度の砂糖です。くせがなく甘味が淡泊なので、コーヒーや紅茶、お菓子に使用されます。
車糖(ソフトシュガー)
車糖は結晶が小さく水分が多いのが特徴で、ソフトシュガーともいいます。その色調により、上白糖、三温糖に分けられ、溶けやすいので調理に広く利用されます。
上白糖
上白糖は最初に取り出される白色の結晶です。転化糖を含むのでしっとりしており、吸水性に優れています。日本で日常的に使われている砂糖の約半分が上白糖です。
三温糖
三温糖は、上白糖の結晶をとった後に残った糖液から少し褐色かかった砂糖です。もともとは「砂糖の汁を三度煮詰めて作る砂糖」ということで三温糖と言われました。実際、精糖工場ではグラニュー糖や上白糖を製造する時に煎糖した後の蜜を材料にして三温糖を作ります。加熱により着色しており、煮物などに使うとコクがでます。
加工糖
加工糖は、精製糖を用途に合わせて加工したものです。主に形状により、角砂糖、氷砂糖、粉砂糖、顆粒状糖などがあります。
角砂糖
角砂糖はグラニュー糖に糖液を加え、立体型の型にいれ湿らせて固め乾燥させたものです。
氷砂糖
氷砂糖は、純度の大きい砂糖液をゆっくりと時間をかけて結晶化させたものです。キャンディーとしてそのままや、梅酒などの果実種に使われます。
粉砂糖
粉砂糖は、白ざら糖やグラニュー糖を微粉末にしたもので固まりやすいため、少量のコーンスターチなどのでんぷんを加えることもあります。ケーキやクッキーのアイシングやデコレーションに用いられます。
顆粒状糖(フロストシュガー)
顆粒状糖は、溶けやすく加工した多孔質で高純度の砂糖です。フロストシュガーともいい、ヨーグルトや果実などに振りかけます。
その他の製法
その他の製法として「和三盆」があります。和三盆は、日本の伝統的な製法で作られる砂糖です。職人の手作りで、盆の上で3回研ぐことからこの名が付けられたといわれています。卵色をしており、結晶が非常に小さく、独特な風味を持っています。徳島県、香川県が主な生産地で、高級和菓子に用いられます。
砂糖の種類で健康への影響が変わる?
砂糖の作り方や種類、特徴が分かったところで本題である「白い砂糖は本当に体に悪いのか」見ていきましょう。
白い砂糖は漂白してある⁉
「白い砂糖は漂白してある」と誤解されることもありますが、砂糖の結晶は無色透明で結晶が光を反射するため白く見えます。雪が白く見えるのと同じ状態です。そのため、「白い砂糖は漂白してある」というのは嘘の情報です。
精製した砂糖はミネラル量が減る?
実は精製された砂糖と精製されていない砂糖は、ミネラル量には大きな違いがありません。
確かに黒糖はほかの砂糖に比べ、ミネラル・ビタミン類が多く含まれています。しかし、その量はごくわずかです。普段使用している砂糖を全て黒糖や三温糖に切り替えたとしても、摂取できるミネラルの量は微々たるもので、健康のためのミネラル補給とはいきません。
例えば、黒糖を100g食べるとカリウムが1100mgとれます。しかし、同じ100gでもほうれん草には690mg、冷凍枝豆には650mg、ブロッコリーには500mg、豚ヒレ肉には400〜430mg、まだいには450mgのカリウムが含まれています。
一見すると、砂糖を100mg摂取した方が多いと感じますが、カリウムだけでなく多様な栄養成分が含まれ食べやすいほうれん草やブロッコリーなどの食品からとった方が体によいことは明らかです。
つまり、他の砂糖に比べ黒糖にミネラルが多いということに間違いはありませんが、豊富であるとは言えないのです。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)
砂糖のGI値はどのくらい?
GIとは食後血糖値の上昇を示す指標、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、GI値(グリセミック指数)という言葉です。
一般的にGI値の高い食品は、血糖値を急に上げてしまうといわれています。血液中に糖が多いと、血管の壁が壊れやすくなったり、血管が詰まったりすることがあります。つまり、血糖値が高いと糖尿病をはじめ、網膜症や腎症、神経障害などさまざまな疾患や症状を引き起こす可能性がとても高くなります。
砂糖のGI値は上白糖が109、グラニュー糖が110、三温糖が108、黒砂糖が99、てんさい糖65と高めです。そのため、大量に砂糖を摂取するのは控えましょう。
「血糖値を急激に上げないこと」が、食べても太りにくい状況を作るポイントとなるわけです。
糖質制限中の砂糖の代用品
砂糖を大量に摂らなければ血糖値は急激に上がらないとお伝えしたものの、やはり健康のために血糖値の変化を敏感に気にされている方も多いはずです。そんな方におすすめしたい、砂糖の代わりになるGI値の低い食品です。
- はちみつ
- メープルシロップ
- ココナッツシュガー
- オリゴ糖
- みりん
それぞれのおよそのGI値は、はちみつ40~65、メープルシロップ70、ココナッツシュガー35、オリゴ糖10~30、みりん15で、砂糖のGI値が109に対しとても低いGI値になります。
そのため、血糖値を気にしている方は砂糖の代わりに上記の食品で代用すると良いでしょう。
料理によって砂糖を使い分けよう
砂糖は砂糖でも、煮物料理やお菓子などの料理に使う砂糖は使い分けた方が良いです。
なぜなら、砂糖の種類や精製度によって仕上がりに大きく差がでるからです。
基本の「上白糖」
上白糖はグラニュー糖に転化糖が加えられたもので、グラニュー糖よりも甘さがあります。また、転化糖を含んでいるため吸水性に優れており、しっとりとした味わいに仕上がります。上白糖はくせがなくどんな料理にも合うため、常備しておくと良いでしょう。
煮物料理や照り焼きに「三温糖」
三温糖はコクがあり、独特の風味をもっています。そのため、煮ものや漬け物、みそ料理、ソースなど料理の深みを引き出したいときに活用すると良いでしょう。
コーヒーやお菓子作りに「グラニュー糖」
グラニュー糖は純度が高く淡白な甘みをもちます。一般的にお菓子作りに使用されますが、料理にも使うことができます。
クセがないためコーヒーや紅茶など香りを生かしたい飲み物に使われ、お菓子作りでグラニュー糖を使用すると、他の素材の味を邪魔することなく甘みをつけることができます。また、転化糖が含まれておらずサラサラしているので、ビスケットやタルト、スポンジケーキなど軽く仕上げたい焼き菓子に向いています。焦げがつきにくい性質をもっているため濃い焼き色をつけたくないお菓子やキャラメル作りにはグラニュー糖を選ぶと良いでしょう。
まとめ
「体に良いから」という考えで三温糖や黒糖を選んでも、得られるミネラルやビタミン類はごくわずかだということはお分かりいただけましたか。砂糖を選ぶ際には「煮物料理にあうから三温糖を」「お菓子を作るからグラニュー糖を」という選び方をしていきましょう。皆さんも是非、砂糖を上手に使い分け「美味しい」料理を作っていきましょう!
〈参考文献〉
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